蓮根饅頭のこと 2

蓮根饅頭は、和食では昔からけっこうされているお店が多く、ポピュラーなもののひとつなのですが、うちでも開店以来、ずっとお品書きに加えております。

どんなものかと、簡単にご説明いたしますと、蓮根を擦り下ろし、団子状にしたものを油で素揚げにしたり、またはそのまま蒸したりしたものに銀あんなどをかけて仕上げた、煮物の一品なのです。

蒸すか揚げるかは、板前さんによってそれぞれやり方が違うようです。

うちでも、お品書きに蓮根饅頭が24年間ずっと存在しております。

今のこのお店には、いろいろな事情があり、この前移ってきたばかりなのですが、一番最初は住まいの近くで、お店をもって、8年ほど前にこの北新地にやってきたのでした。

この蓮根饅頭なのですが、実は今回のお店の移転で、お品書きから消えかかっていたのです。

以前のお店より、調理場が狭くなり、火口のコンロが少なくなって、お品書きのメニュー数をある程度抑えざるを得なくなったのです。

それに以前のお店は換気システムがイマイチで、油で素揚げしてから作る蓮根饅頭はいつも換気のネックになっていました。

そこで、蓮根饅頭をメニューから外す案が浮かんだのです。

随分長い間、蓮根饅頭をお店でお出ししていたのですが、実は過去になんども同じことを考えたことがありました。

ずっと、変わらずに同じお料理をお出ししていると、とてもありがたいことに、お客様には喜んでいただけるのですが、ぶっちゃけ、製作側はマンネリ感の壁に当たってしまうのでした。

何度も趣向を変えようと考えたのですが、蓮根饅頭のファンのお客様が多く、開業以来、結局ずっと今のかたちで提供させていただいたのでした。

 

今回もかなり迷ったすえに、やはりお品書きに残すことになったのでした。

 

 

蓮根饅頭のこと 1

  はじめまして、私はここ大阪は北新地で和食のお店をしております。

カウンターのみの小さなお店を夫婦で切り盛りしております。

  先日、私たちのお店に、ある食材パンフレットが届きました。

フルカラーの分厚くて立派な業務用食材の通販パンフレットです。

最初は誤配送かなと、なんでここの住所がわかったのかな?と首をかしげながら、

そのパンフレットをパラパラと見ていたのでした。

それもそのはず、実は私たちがこの場所にお店を出してから、

まだひと月くらいしか、たっていないのです。

開店間もない、こんな小さなお店にまで立派なパンフレットが届いたことも

びっくりなのですが、業務用食材のあまりの種類の多さにさらにびっくり。

ほんとうに無いものを探す方が難しいくらい、とくに半加工食材が多いのは、

人手不足といわれて久しい飲食業界だからでしょうか?時代を感じることでした。

その中でも、私が思わず目を疑ってしまったのは、「銀あん」という文字なのです。

銀あんとは業界用語なのですが、味付けされた出汁に葛粉や片栗粉などで

とろみをつけたものなのですが、なんとこんなものまでチューブに入って

販売されていたのです。私にとっては「板前さんなんてもういらないのでは?」

と思ってしまうほどの衝撃なのでした。

うちでは、もちろんこういうものは使わず、マスターがすべて味付けしております。

当店ではこの銀あんを使うお料理で、蓮根饅頭があります。